北海道農業土木協会表彰事業 “優秀賞”を受賞
 平成19年8月31日に開催された、平成19年度北海道農業土木協会賞表彰式において、平成18年度に農業土木新技術検討報告会で発表した「草地における低コスト疎水材型無管暗渠の効果検証及び疎水材の水質浄化機能の検証について」の当財団職員を含めた共同発表者(内門亮子氏・中川隆氏・南部雄二氏・山崎祐樹氏)が、表彰事業優秀賞を受賞いたしました。

 今回の業績は、関係機関の皆様方のご指導はもとより、現地調査の連携体制、農家の皆様方のご協力の成果であり、携わってこられた皆様とともに受賞の喜びを共有するとともに、ここに御礼申し上げます。

 その他に3課題が受賞されました。受賞者は次のとおりです。

■奨励賞
  久保田利之氏、奈良幸則氏
  課題名:「重粘質土壌におけるトレンチ(有材)による補助暗きょの効果」

■奨励賞
  田山光幸氏、橋本智史氏、宗像政美氏
  課題名:「「ふっくりんこ」に関わるほ場の課題と改善について

■奨励賞
  水間啓慈氏、坂井松信氏
  課題名:「客土による泥炭地産米の食味向上に向けた北海道の取組み」
   
北海道農業土木協会賞については、こちらをご参照ください。
     ⇒(北海道農業土木協会ホームページ)

++北海道農業土木協会表彰事業 優秀賞(平成19年度)++

【受賞対象者】
  内門亮子 氏(根室支庁 産業振興部) 
  中川 隆 氏(根室支庁 産業振興部)
  南部雄二 氏(財団法人 北海道農業近代化技術研究センター)
  山崎祐樹 氏(財団法人 北海道農業近代化技術研究センター)

【課題名
 「草地における低コスト疎水材型無管暗渠の効果検証及び疎水材の水質浄化機能の検証  について」

【選考理由】
 水田・畑地帯と比較して草地の暗渠排水整備はいまだ十分な水準にあるとは言い難い。
整備を望む農家は多いものの、収益性の低い牧草生産地帯では、暗渠施工の費用対効果が小さいからである。しかし、排水性の悪い圃場は牧草の収量、品質および営農作業効率が低くなることから、排水改良は必要である。
 本事案は、低コストな暗渠排水工法として吸水管を用いない疎水材(火山レキ)のみの暗渠(疎水型無管暗渠)を一般的な暗渠(吸水管と疎水材で構成される暗渠)と比較し、排水機能や水質浄化機能を検証したものである。検証作業は標津町における現地調査、および暗渠断面モデルによる室内実験からなり、平成16年度から18年度の3ヵ年にわたって実施された。
 検証の結果、圃場の排水性に関しては、排水量は一般型暗渠と同等であることが確認された。また、排水時間や地下水位低下時間がやや長くなるものの、降雨直後を除くと地下水位や土壌水分、地耐力、牧草品質などには遜色なく、無管暗渠は草地に必要な排水機能を有することが確認された。コスト面では一般型暗渠の約6割に抑えられること、また室内実験によって火山レキ疎水材の水質浄化機能発現も確認している。
 以上のように、本事案は草地帯における低コスト型無管暗渠の排水効果を確認するとともに、疎水材として適用した火山レキの有用性を実証した。農業土木事業に対する社会的要請である「低コスト」、「環境調和」、「地域資源活用」に応えた観点からも高く評価され、「優秀賞」に相当するとみとめられた。
 
++北海道農業土木協会表彰事業 奨励賞(平成19年度)++
【受賞対象者】
  久保田利之 氏   奈良  幸則 氏

【課題名
 「重粘質土壌におけるトレンチ(有材)による補助暗きょの効果」

【選考理由】
 網走支庁管内は特殊土壌が広く分布しており、排水不良地も多いが、とくに重粘質土壌の排水改良が課題となっている。昭和40年代以降、土地改良事業のなかで暗渠排水整備が行われてきたが、近年では、営農環境の変化にともなって農家が求める整備の要求レベルが高くなってきた。こうしたことから、重粘質土壌特性を勘案して排水効果を促進する方法として、補助暗渠工法である「トレンチ(有材)」による組み合わせ暗渠が有効と考えられている。
 本事案は、重粘土に対応可能な掘削幅の狭いトレンチャ掘削機を用いた施工効果や経済効果、耐久性などを常呂町の重粘土壌地帯で実地検証したものである。その結果、トレンチ(有材)による補助暗渠施工圃場は、対象区(補助暗渠なし、本暗渠のみ)と比較して流出率が2〜3倍高く、余剰水排除による湿害軽減、地耐力の早期回復、適期収穫などの効果が期待できるほか、土壌物理性を改善して作物品質向上効果が期待できることなどを確認した。
加えて、トレンチャによる細溝掘削を可能としたことで疎水材の減量と、埋め戻しを同時施工することによるコスト削減を明らかにしたことは高く評価され、「奨励賞」に相当すると認められた。
 
++北海道農業土木協会表彰事業 奨励賞(平成19年度)++
【受賞対象者】
  田山光幸 氏   橋本智史 氏   宗像政美 氏

【課題名
 「「ふっくりんこ」に関わるほ場の課題と改善について」

【選考理由】
 「ふっくりんこ」は、平成15年度に道立農業試験場が育成した新品種米で、耐冷性が高く、晩生であることから道南の気候条件に適しており、これまでの道南米イメージを変えうる良食味米として期待されている。消費者に支持されるブランド米の地位を確保し維持するためには、品質の向上と安定を図ることが必要となる。このため、渡島支庁では、高品質化と安定生産を目途として、JA、農業改良普及センター等の関係機関・団体と連携して圃場の排水性や栽培管理の実態を調査し、タンパク質などの品質との関係を分析してきた。 
 本事案は、「ふっくりんこ」作付け圃場の排水機能実態調査と生産者による栽培管理実態のアンケート調査を通じて、品質との関連を分析したものである。その結果、春先の融雪水排除・地温上昇を早め、耕起・中干しなどの栽培管理作業を迅速かつ適期に行うためには圃場の透・排水性が重要であり、これらの改善に取り組む必要性を確認した。「ふっくりんこ」の生産が拡大し、安定した高品質を確保するためには課題も残されているが、なにより、立場の異なる複数の機関(団体)が連携協力して地域振興を目指した取組みは優れた業績と評価され、「奨励賞」に相当すると認められた。
 
++北海道農業土木協会表彰事業 奨励賞(平成19年度)++
【受賞対象者】
  水間啓慈 氏   坂井松信 氏

【課題名
 「客土による泥炭地産米の食味向上に向けた北海道の取組み」

【選考理由】
 石狩川下流域の水田地帯は、下層土の大部分が泥炭で構成される。その作土は、数十年にわたって実施されてきた粘質な各土層からなる。しかし、下層の泥炭の影響が残るため、生産されるコメのタンパク含量は総じて高い傾向を示す。泥炭地産米のタンパク含量低減の有効な手段として客土が再認識され、また一部農家では私費で砂質土等を客入する動きも見られる。一方、北海道が実施してきた水田客土は、収量増が目的で品質向上を目途とした計画は未整理であった。売れるコメ作りが主要課題となった現在、客土計画の明確化が問われている。
 本事案は、泥炭地米の品質向上に寄与する客土の要否判定、要否判定に用いる代表地点の選定方法、客土深の設定に関して、北海道農政部ならびに北海道立農業試験場の報告をもとに整理し、判定方法と指標値を提案している。食味の向上は農家の営農範囲にかかるものであって土地改良事業の対象とはならなかったが、「事業」として認められるようになった現在、本検証報告は同様の新規計画におおきな参考指針を提示したことになり、高く評価されるものである。よって「奨励賞」に相当すると認められた。