第22回農業土木新技術検討報告会での研究発表
 平成17年11月1日に札幌市(かでる2.7)で開催された、第22回農業土木新技術検討報告会で、当財団から1課題を発表いました。
 

畑地かんがい施設整備による地域営農の変化
〜石狩市高岡地域の事例〜

北海道石狩支庁農業振興部整備課
(財)北海道農業近代化技術研究センター
   菅井 徹
 ○小林 英徳   南部 雄二
【講演の概要】
 石狩市北部の高台丘陵地に位置する高岡地域では、稲作を主体に、畑作・露地野菜作、施設栽培を取り入れた複合経営が展開されている。これまで、地域の水源は素掘りの皿溜や地下水に依存していたため、安定的で良質な用水を確保することは難しく、特に干ばつ年での用水確保には多大な労力を要していた。
 このため、国営かんがい排水事業高岡シップおよび道営緊急畑総事業高岡地区により畑地かんがい用水を確保し、ほ場かん水施設が導入された。地域では、畑地かんがい施設の整備を契機に、施設栽培の生産組合が発足し、高収益作物導入による営農の転換が図られている。
 本報告では、畑地かんがい施設整備による地域営農の変化、生産者の評価、出荷農作物の市場評価等について検証し、施設整備効果が発現する条件について考察する。

【考察と評価の概要】
 従来、施設園芸に特化した地域ではなかった高岡地域において、かんがい用水が確保され、集約型作物と土地利用型作物の方向性が明確となり、集約型農業においてはミニトマトを主体としたハウス栽培が拡大し、生産性の安定、収益性の向上等、地域営農の変化がみられた。
 また、都市近郊の立地を活かした施設園芸を拡大するための施策と労働力を確保するための施策の相乗効果により、かんがい用水を利用した営農形態が定着しつつある。
 このように、畑地かんがい施設の導入により、個々の営農の変化と地区内の営農の変化がみられ、施設整備は地区特性に応じた営農目標を設定し、着実に実践していくための生産基盤となり、その重要性が示された。
 また、かんがい用水の安定的な確保と用水利用の利便性向上は、将来的にも導入作物の選択肢を拡大し、後継者・新規就農者の確保にも明るい兆しを感じる材料となり、精神面での評価も高いものである。
 さらに、地域の農業振興計画との関係性からも、地域における明確な位置付けが読み取れ、畑地かんがい施設の有効性とその効果をみることができた。
これらの効果は、地域農業の活性化に向けた畑地帯総合整備事業および畑地かんがい施設導入による成果と評価できる。
 今後、畑地かんがい施設を整備していく地域において、地域農業との関わりを明確にし、地域農業の新たな戦略の一つとして、かんがい用水の活用を位置付けていくことが望まれる。また、地域特性に対応した、かんがい技術の確立とその普及が、施設整備効果を確実に発現させるうえで重要な要素となる。